- 【成年後見人確保へ新法成立=認知症高齢者増に対応】(時事ドットコム、2016年4月8日)
- 【成年後見促進法が成立 「自己決定権を侵害の恐れ」】(東京新聞、2016年4月8日)
- 【成年後見制度促進法が成立 なり手の育成が柱】(朝日新聞、2016年4月9日)
- 社説【成年後見制度 利用者本位の見直しを】(毎日新聞、2016年4月8日)
- 社説【成年後見制度法案 意思決定支援策が最優先だ】(琉球新報、2016年4月8日)
【医療契約の締結】≠【医的侵襲への同意】
引用部分の強調は引用者。
■赤沼康弘【利用しやすい成年後見制度を創るための課題】(DINF)
成年後見制度は法律行為に関する制度であるため、契約などを締結したり、弁済等の法律行為をすることはできるが、医療を受けることに同意する権利はないとされています。
この点は少しわかりにくいかと思いますが、医療を受ける場合には、医療の提供と医療費を支払うという契約の部分と、身体に注射をし、メスで切るなど身体を傷つけることの同意の部分の二つの同意、承諾が必要になります。
身体を切ったり、身体に直接影響を与える行為をするときは、身体に直接影響を与えてもよいという本人の同意が必要になるのです。しかし、この同意は人格権に基づくもので、契約と違って法律行為ではありません。そのため、成年後見人には、医療の同意権はないとされるのです。しかし、そうなると判断能力がなくなって、医療の同意ができない人の医療はどうすればよいのでしょうか。医師は、同意なくして医療を行うことができるのでしょうか。
法律の規定は全く沈黙しています。そのため、医療の現場では大変に困った事態になっているわけです。この同意の問題を厳密に受け止めて、同意がない以上やむを得ないとして積極的な医療行為を止めてしまうという事態も生じていると聞きます。
■田坂晶【刑法における同意能力を有さない患者への治療行為に対する代諾の意義】(PDF、島大法学第55巻第2号)
法律学の分野では、医的侵襲に対する代諾を認めるべきではないと主張する見解も少なからずみられる。その背景には、医療契約の締結と医的侵襲への同意とが峻別されているという現状がある。
医療契約の締結は法律行為であり、代理になじむ性質のものであるから、成年後見人や親権者などの法定代理人が患者を代理して契約を締結することができると解されている。
他方で、医的侵襲に対する同意は法律行為ではなく、しかも一身専属的な性質を有するものであるから、判断能力がある限り患者本人が行うべきものであるとされるのである。
したがって、成年後見人や親権者は、本人に代わって医療契約は締結できるが、医的侵襲に対して同意することはできないという結論が導かれるのである。