持続のための、制度的・技術的実装 (メモ)

ひきこもる人は「プライドがあって自信がない」というが*1、多くの “健常者” はプライドがあって自信もある、しかしどうしようもない。――プライドや自信などの心理主義的用語で決めゼリフを考えているかぎり、必要な話はできない。(決めゼリフ生産という形でのつながり方しかできない)


《一瞬も戦線離脱を許さない社会は、かえってサステナブルではない》――これを実証できないだろうか。


政治的葛藤を無視しない臨床運動は、「葛藤の医療化」の反対をやろうとしている。
とはいえ「精神医療の政治化」というスローガンは、それ自体がメタなアリバイであり得る。プロセスの詩的満足にふけり、人を利用するばかりで、戦術も手続きもない。 新しい主張には、新しい手続きが要る。
働く人には労使闘争の、学者には「業績づくり」の、医師には医療主義のルーチンしかない。それでは、既存枠での分断統治にすぎない。


消費主義がまずいといっても、「資本主義反対!」とかの政治スローガンではない。そこには《自分を維持する作法》として、嗜癖ナルシシズムしかないのだ。 ▼消費主義は、関係作法を無自覚に固定する。それは、消費主義じしんの首を絞めていないかどうか。
不況とは、モノを媒介にしてすら繋がることができないってことじゃないのか。問題意識を経済に特化することで、つながり方がますます貧しくなり、ますます繋がれなくなってないか。 方法として、狭いルーチンへの嗜癖しかない。 ⇒「嗜癖によるつながり」をつながりと呼べるか。


日本はこれから、人類史上未曽有のレベルに高齢化が進む*2。 人に頼らなければ生きられない人ばかりになり、若い世代は就労できない*3。 集団的破綻をもたらすほどの孤立化については、心理主義や成功自慢では処方箋にならない。


多くの日本人は、税金を払えず負担ばかりかける引きこもり経験者を殺したがっている。 自分に殺意を向ける社会に復帰できなければ自己責任であり、意味のない独り暮らしを求められる――規範が先にある自律は成り立たない。自意識を駆動力とする社会性は維持できない。



WikiLeaks への評価は、アサンジの人格への評価と関係ない*4

WikiLeaks をめぐって、「違法なのか、そうでないのか」が議論されている*5
不当に確保された恒常性への異議申し立て(そのためのインフラ提供)が、どういう手続きで処遇されるか。
《制度化された不当さ》へのチャレンジに、人格批評をしてもしょうがない。 「古い制度はそれで良いのか、新しくどんな制度が必要なのか」――そこで議論すべきだ。



*1:無縁・多死社会 (データでわかる日本の未来)』p.143、斎藤環《このままでは爆発する! 今、ここにあるひきこもり「2030年問題」》より

*2:無縁・多死社会 (データでわかる日本の未来)』pp.248-9 によると、死ぬ場所すら足りない。 2030年には、年間死亡者数が現在の4割増し(!)の160万人に達し、在宅でも病院でも死ねない「死に場所難民」の発生が予想されるとのこと。

*3:若年野宿者の就労支援をおこなっている36歳男性の発言: 「よく30代に仕事がないといわれていますが、就労支援をしている人間からすれば、“仕事はたくさんある。ただ、みんなが満足できる仕事がない” ということでしょう。 私たちが必死の思いで企業に頭を下げ、雇用してもらっても、9割は3日ももたずに辞めていく。 それで “社会が悪い” なんて言われてもね・・・」 「人間関係がうまくいかないとか、仕事が難しいとか、上司が生意気だとか・・・・要するに、なんとか仕事を辞めたいんですよね。 本気で更生したい人は黙っていても頑張りますが、大多数は働いた実績をつくって、どうやったら生活保護を受給できるかということばかり考えている。 最初はそうじゃなかった若年ホームレスの人も、シェルター〔野宿者の一時緊急宿泊施設〕の中で “洗脳” されちゃうんですよ」 「なかには、“不正受給コーディネーター” のような裏仕事師が、ホームレスのような顔をしてシェルターに紛れ込み、新米ホームレスを貧困ビジネスの餌食にしている」(『無縁・多死社会 (データでわかる日本の未来)』pp.121-2より)

*4:アサンジが素晴らしい人物でも、インフラとしては問題があり得る。彼がひどい人物でも、インフラとしての意義はあり得る。

*5:主要メディアによって広められた、ウィキリークスに関する8つの思い違い」(via@wikileaksjp)ほか、英語サイトでは「違法ではない」という主張がたくさん出てくる。 それに対し、「現状で罪を問えないなら、法律を変える必要がある」という意見も出ている(参照)。 ▼cf.「ウィキリークスに関する共同声明」(国連)