全体会議メモ

  • 呂寅仲(ヨ・インジュン)氏からは、「H.S.D.(Hikikomori Spectrum Disorder)」、つまり「連続的ひきこもり症候群」という概念が提唱されました。 発達障害統合失調症うつ病人格障害強迫性障害、対人恐怖症、社会的ひきこもり――などを、連続的な連なりとしてとらえようとする試みのようです。 ▼私は、「カテゴリー化すること」そのものについて、もっと議論が必要と感じています。 なぜならそれは、視線の体制を固定してしまう危険をもっているからです。 私は、少なくとも「社会的ひきこもり」については、考え方や役割の硬直こそが最悪の要因と考えています*1
  • 精神科医中垣内正和(「KHJ親の会」顧問)は、社会的ひきこもりへの支援を、依存症支援のモデルで理解されています。 152人の臨床例を参照したご本人の講演によれば、「さまざまな支援タイプを比較すると、複合的な取り組みのケースがうまくいっている」とのこと*2。 ▼中垣内氏の講演では、長期ひきこもりによる死亡事例も報告されていました(参照)。 私が個人的に仄聞する範囲でも、死亡事例(自殺・病気)や野宿者化の事例はつねに出てくるのですが、そのわりにはデータにあがっていません。 早急な議題化が必要です。


【参照】: 「社会的ひきこもり」とは斎藤環

 「社会的ひきこもり」は診断名ではない。これを臨床単位とみなすことは出来ない。それは「不登校」が臨床単位ではないのとほぼ同じ理由からである。それは一つの状態像であり、問題群である。精神医学の中で類似の概念を見つけるなら、「アルコール関連性障害」がもっともこれに近い。これは「アルコール」をめぐって生ずる依存症、臓器障害、暴力、交通事故などといった、精神・身体・社会など複数の領域にまたがる諸問題の総称である。私の考える「社会的ひきこもり」の問題は、「ひきこもり関連性障害」として理解することが、さしあたり最も正確であるように思われる。




*1:私が三脇康生らの「制度を使った方法論」から、臨床上の決定的恩恵を受けたのは、まさにこの点においてでした。

*2:中垣内氏にかぎらず、今回の全体会議での各種発表は非常に濃密でした。