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- 資料:「新・東京都教育ビジョン」(PDF)
東京都は08年度から、不登校経験者や中退者など引きこもりになる可能性がある若者の情報を基に、本人や保護者を支援する「ひきこもりセーフティネット」を始める。予防に特化した支援に行政が乗り出すのは全国初。
《予防》という発想は、それ自体がひきこもりを悪化させる環境因になることが懸念されます*1。
制度順応させることを自分のミッションにした人が、“勤勉に” 職務を果たそうとする。 その支援者自身が、自分の制度順応のあり方を分析的に疑ってくれないかぎり*2、「体制順応派」の全体主義みたいなイメージが湧いてきます*3。
セーフティネットのプログラムに参加しつつ、単なる役割順応とは別の役割意識を機能させること――そうした作業がないと、「閉じこもる奴はあぶりだせ」になりそうで怖いのですが・・・。(記事の最後で、「育て上げネット」の工藤啓氏のコメントが曖昧で歯切れが悪いのは、そうした戸惑いもあるように感じます。*4)
ここで提示された事業を活かしつつ、それを単なる全体主義にしない手作業の分析や交渉が、どうしても必要です*7。
*1:場所は失念しましたが、斎藤環氏がどこかで「予防」という発想のまずさをすでに指摘されていたと思います。▼人的ネットワークが道徳の担い手になり、逸脱者を監視しようとする発想は、システム設計そのもののレベルで社会を生きやすくしようとすることとは別です。
*2:当ブログで「制度分析」とか「論点化」と呼んでいるのはその話です。
*3:第二次大戦中の「隣組(となりぐみ)」、映画だと『未来世紀ブラジル [DVD]』などを思い出します。
*4:記事に編集されたコメントは、ご本人の意向がほとんど出ていないこともあるので、工藤啓氏の意向を判断するには留保が必要です。
*5:そういう左翼は、自分たち自身が全体主義であることを見ようとしません。 それは、「反体制であること」における順応主義です。
*6:左翼だけでなくて、ひきこもっているご本人も、こういう「メタ正義」で満足していないでしょうか。
*7:【参照】:斎藤環によるアイデアメモ:「セーフティネットの構築(1)」