2011-04-01から1ヶ月間の記事一覧

「自分を健康だと思っている人間をどうやって治すことができようか」*1

各人は、自分の当事者性を棚に上げるスタイルの違いで棲み分けている。 松嶋健 : この本を作ること自体が制度分析のプロセスになるように作らないと。制度分析についての本じゃなくて、制度分析としての本というふうになって初めて、この本を作る意味がある…

制度化された現実逃避

学問はディシプリンの前提を自明視して語るゆえに、あまりに当事者的すぎる(メタ性がなさすぎる)。 また《当事者の告白》は、「なぜ自分が語ることを許されているか」を自明視するので、あまりに学者的すぎる(語りのはめ込まれたメタな構造に頼りすぎる)…

各方面でごまかされている当事者性

「〈企画〉 アニメ評 魔法少女まどか☆マギカ」(京都大学新聞社) もとのアニメは見ていないが、強く触発された。 当事者性とは、伝わらないものを抱えること。 受け入れられたいという願望を満たすために自分で格闘しなければならない、そういう状況に追い…

環境問題としてのメタ言説

メタ言説は、いわば各人の原子力発電みたいなもの。 私は、わけが分からぬまま10代前半に苦しみ始め、30年近くたってようやく何がおかしいかを理解できた。とはいえそれは長期の専門的研究の成果であって、それをそのまま説明しても、震災前に脱原発を呼びか…

学問がさわれない沈黙

差別・いじめ・脅し・排除と戦うには、問題それ自体と戦うだけでなく、 それに取り組む人たち自身による差別・いじめ・脅し・排除と戦わねばならない。 「まさかあの人が」。 沈黙の共謀*1は、支援や調査、自助グループにもある。 「これだけ出会っているの…

現実のしかめ面

「堀江貴文氏緊急記者会見 主催:自由報道協会」(togetter) 堀江氏の発言より: 国民もICレコーダーを持ち歩くことが重要 100回くらい連続して言わなければならない 金も地位もない段階では立派なことなんかできない 偏ったマスコミ報道も含め(参照)…

禁じられた語り

今日あらためて、制度論の許される環境でそういう分析をご一緒することがどれほど “臨床的” かを確認できた*1。 こういう体験は精神科クリニックに何万円払っても現状では無理。 肩書きと役割ポジションに自己監禁せねば、関係に参加できない。支援ですら「○…

「シニフィアンの支柱」、「記号論的な足場」、「装置」

意味の彼方へ―ラカンの治療学作者: 新宮一成出版社/メーカー: 金剛出版発売日: 1996/02メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 10回この商品を含むブログ (2件) を見るpp.249-250、ジャック=アラン・ミレールの発言より(以下、強調はすべて引用者): つまり…

当事者概念の再創造、という臨床事業

「臓器の損傷」なら、医学に任せればよい。 しかしヒトの苦しさについては、 (1)主観性の生産それじたいの問題と、(2)合意形成の問題 があって、その2つは絡み合う*1。 これらは、おのれの当事者性をどう生きるか、という問いに重なる*2。 人は人である…

参加の当事者であること

医師・学者・知識人の言説は、自分の私的関係性を論じる能力を持たない。彼らの言説は、むしろそれを隠蔽することでようやく成り立つような体質を持っている。 ひきこもりでは、至近距離の関係こそが鬼門だから*1、現状では、ひきこもりを原理的に論じられる…

文献事情メモ

『Politique et psychanalyse』(1977年)を原書とする邦訳『政治と精神分析 (叢書・ウニベルシタス)』掲載の論考「精神分析と政治」には、 タイトルを変えた同じ文章「欲望の闘争と精神分析」があり、 それは邦訳『分子革命―欲望社会のミクロ分析 (叢書・ウ…

参加パターンの固着としての「ひきこもり」

社会にうまく参加できない人を話題にすることが、誰にとって都合がいいか。 逸脱者を利用して業績を挙げようとする人か。 社会批判のイデオロギーを喧伝するのにいいかもしれない。(「資本主義は間違っていた!」) 「対策を講じました」というノルマ達成の…

「Psychothérapie Institutionnelle」の初出論文

ベルギーの「ヘント大学」*1【⇒wikipedia】から出ている オランダ語の雑誌サイト『Psychoanalytische Perspectieven』*2 に、 「制度による、制度に対する精神療法 Psychothérapie Institutionnelle」という言葉が初めて使われた1952年の論文*3が再掲されて…

勤勉な無意味

『医療環境を変える―「制度を使った精神療法」の実践と思想』再読中。 Psychothérapie Institutionnelle*1では、ある種の閉所恐怖症が問題になっている。 閉所と言っても、たんに空間的に外に出ても、社会が閉じている。そのままでは監禁される。 息ができる…

グァタリ『分子革命』――英訳版と邦訳版、仏語原文の対応

あまりに分かりにくいので、メモを作りました。 【※一つだけ出典が分からなかったので、お分かりの方は私宛てのメールか、twitter やブログのリンクで教えていただけると嬉しいです。 ⇒※その後メールでご教示をいただきました。ありがとうございます。(4月9…

日常を作っているもの

しかつめらしい貞淑さは、むしろ抑圧を隠蔽する。 「原発ジプシー」(田島正樹氏)より: この本を出版した頃から、ご自宅に頻々と脅しの電話が入るようになったということである。「家族の命はないと思え」とか、「子どもがどこかで交通事故に遭うぞ」など…

問いと答えの制度

「近藤和敬 「問い・身体・真理」」(山森裕毅氏)より: 問題の〈理念〉としての性格がうまく論じられていない ドゥルーズの場合、「問題」の存在論的性格を解明するために数学に依拠している 近藤氏のもとの論考は読んでいないが*1、このエントリーは次の…

「記号論的な足場(échafaudage sémiotique)」

山森裕毅氏のご教示で知ったのですが、 フェリックス・ガタリ 『La révolution moléculaire』(1980年版) の邦訳『分子革命―欲望社会のミクロ分析 (叢書・ウニベルシタス)』(1988年)では、 原書の初版である1977年版にある「記号論的な足場(échafaudage …

分節生成の労働過程としての離接的総合

人間関係や社会参加がうまく行かない状態について、原理的考察を欠いたままでは、 努力が逆効果になる(努力すればするほど、悪いメカニズムを補強してしまう)ことがある*1。 それゆえ、 誰かとつながろうとした時に前提となっている序列や役割意識・罪悪感…