2010-01-01から1ヶ月間の記事一覧

UP 直前の走り書き

本エントリーをまさに公開しようとしたとき、酒井泰斗氏の新しいレスポンスがありました。 「『概念分析の社会学』合評会拾遺(その4)」 ありがとうございます。 そのエントリーより: そこで上山さんのエントリーたちのほうを見てみよう、ということにし…

環境の秩序と、《ふさわしいあり方》

私は、酒井さんが私に要求された努力を、全てのポジションのかたに求めています。 もういちどご発言から引用します(強調箇所は原文通り)。 たとえば、支援現場では「学校的なもの」が嫌われる、というようなことがあるのかもしれません。けれども、そうで…

被差別ポジションからいかに語るか (4/6)

【(3/6)のつづき】

エスノメソドロジーは、リング上にいる?

以前に私が接した「社会学者」は、自分のやっている学問事業と、目の前の関係実態が完全に解離していました*1。 私が今回エスノメソドロジー(EM)の解説書を読んで決定的だと思った点の一つは、どうやら EM は、単にメタな知的理解をもたらそうとしているの…

《メタ/オブジェクトの解離》――事後的検証の拒否

学者や調査対象者だけでなく、どのポジションにいる人も、 「自分が実際にやっていること」の機序と、 「それを正当化するメタ理解」 が解離しており、この解離じたいが秩序化の基本パターンになっています(解離的な正当化)。 そこで問うべきは、大きく次…

被差別ポジションからいかに語るか (3/6)

【(2/6)のつづき】 ※私自身がこれから勉強を続けつつ、年単位で取り組む論点を整理している感じでもありますので、短期的なお返事は気になさらないでください>酒井さん

被差別ポジションからいかに語るか (2/6)

【(1/6)のつづき】 以下、お返事の本題です。 どの身分から語り、どの議論階層に言及しているか たとえば数学では、「誰がその証明を語ったか」は、真実の構造に関係しません。 証明者の名前を伏せ、論文だけをチェックすることができます。 ところが私が…

被差別ポジションからいかに語るか (1/6)

『概念分析の社会学 ─ 社会的経験と人間の科学』合評会に関連した、酒井泰斗氏へのお返事の続きです(参照)。 酒井さん【12】より(強調箇所は原文どおり): 〔上山による質問の引用〕 《ひきこもり経験者の集まる共同体では、思想の本を読んでいるだけ…

「そんなことをしている時間軸はない」

石飛和彦 「ハロルド・ガーフィンケルのテキストにおける言説空間設定の問題」より(強調は引用者): 社会学の古典としてではなく、一つのテキストとして『社会学的方法の規準 (岩波文庫 白 214-3)』を読む者は、その第1章として「社会的諸事実の研究にふ…

論点メモ

『エスノメソドロジー―社会学的思考の解体』 (1)主観的リアリティの分からなさ (2)社会参加のできなさ ⇒(1)と(2)は、同時に考えなければならない 「すでに成立している秩序」を事後的に外部から記述するだけではどうしようもない。記述する者は、そ…

孔(あな)というリアリティ

ガーフィンケル他『エスノメソドロジー―社会学的思考の解体』 読み進めていて「なんか変だなぁ…」と思ったら、私はこの本を遅くとも90年代前半には手にとって、読み解く努力をしていたのだった。 当時メルヴィン・ポルナーの「お前の心の迷いです」をB4サ…

「倫理的実務としての臨床」と、合意形成

酒井泰斗(id:contractio)氏*1へのお返事の続きです。 上山のレポート: (1/12)「『概念分析の社会学』 合評会」 酒井さんのコメント: 「『概念分析の社会学』合評会拾遺(その1)」 酒井さんのコメント: (1/17 早朝) 「『概念分析の社会学』合評会…

今回はここまでですが、最後に

“臨床的な” 趣旨でハイデガーを参照することが、あながち恣意でもないと思える箇所を引用してみます。 わたしの最初の手紙に対して彼〔ハイデガー〕が速やかな返事をよこしてくれた本当の動機がわかったのは、ずっと後になってからのことだった。あるとき、…

「重要な社会問題」vs「あたりまえの日常」

酒井さん【32】より(強調は引用者): エスノメソドロジストが取り上げるトピック(or 対象領域)は、「苦しみのある」ものには限られない、ということです。 (略) 社会学業界の間でEMの悪名を高からしめた理由のひとつは、まさに、 社会には「問題」…

「取り組み主体の構成プロセス」

最初にこちらから: 【上山からの引用】: エスノメソドロジーでは、「研究者自身にとってもこの活動は臨床的意義を持ち得る」という、取り組み主体の構成プロセスのモチーフが見当たらない(⇒樫村愛子)。[...] ここで言われている「取り組み主体の構成プロ…

場所の方法論

酒井泰斗さんから、真摯なレスポンスをいただいています。 「『概念分析の社会学』合評会拾遺(その3)」 お返事したいこと(それに関連して勉強したいこと)はたくさんあり、ここから生み出していける展開が重要になりそうな、揚げ足取りとは言えないやり…

1月17日、東遊園地

震災から15年たつが、この日付で立ち寄ったのは初めて*1。 夕方5時46分からの黙祷に参加。 少しだけ15年前の空気を思い出す*2。 モニュメントにも立ち寄り、供えられたお花などを見ながら、1時間くらい過ごす。 夜11時から、NHKドラマ『その街のこ…

提供される《場所》のちがい

私は、「再考察の機会」という意味での《場所》を、ブログなり会話のプロセスとして提供していたのだと思う。 それに喜んでくださる人も多くいた。 「ここでなら、考えてもいいんだ」 ところがまた別の人たちは、自分のことを全面受容してくれるという意味で…

《臨床》という言葉の周辺(メモ)

「エスノメソドロジーという事業そのものを、臨床活動と理解することはできないでしょうか」という私の質問(参照)は、とても強引な言葉づかいをしています。 contractio さん: 「臨床」という言葉を使いたいと望み かつ 恐れなく使えるひとの考えが、わた…

今の時点でのメモ

人間を記述するのにどういう概念を使うのか、またそれが《科学》という方法論とどう関わるかは、精神医療の問題そのものだ(参照)。 エスノメソドロジーでは、「研究者自身にとってもこの活動は臨床的意義を持ち得る」という、取り組み主体の構成プロセスの…

『概念分析の社会学』 合評会

概念分析の社会学 ─ 社会的経験と人間の科学作者: 酒井泰斗,浦野茂,前田泰樹,中村和生出版社/メーカー: ナカニシヤ出版発売日: 2009/04メディア: 単行本購入: 7人 クリック: 116回この商品を含むブログ (98件) を見る「STS Network Japan 関西定例研究会>『…

政治と厳密さ

【⇒『完全なる証明』 関連リスト】完全なる証明作者: マーシャ・ガッセン,青木薫出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2009/11/12メディア: ハードカバー購入: 21人 クリック: 475回この商品を含むブログ (64件) を見る やや現世的な感想 社会がイヤになる理由…

関連リンク

amazonの原書ページ:『Perfect Rigor: A Genius and the Mathematical Breakthrough of the Century (Hardcover)』 著者マーシャ・ガッセンへの英語インタビュー掲載 本書 p.265〜 ICM2006 の動画: 「ICM 2006 Video Presentation」 発表ごとに分かれてい…

ネット上で見つけた、本書の登場人物や建物など*1

「サンクトペテルブルグ第239学校」(旧レニングラード、p.42) 10代のペレルマンが通った、理数系を中心としたエリート校(1961年開校) ドミトリー・エゴロフ(p.21) ボルシェビキの運動から教会と学問を守ろうとして追放 アレクサンドル・ヒンチン(p.21…

NHKスペシャル 「100年の難問はなぜ解けたのか 〜天才数学者 失踪の謎」

読了後、以前に録画してあったものを再視聴。 今回の本に登場した、以下の人たちが出演していた。 アレクサンドル・アブラモフ(p.76,102,268,275-6,etc.) ソビエト国際オリンピック・チームのコーチ。 10代のころとは別人のように変わってしまったペレルマ…

マーシャ・ガッセン 『完全なる証明』 関連リスト

完全なる証明作者: マーシャ・ガッセン,青木薫出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2009/11/12メディア: ハードカバー購入: 21人 クリック: 475回この商品を含むブログ (64件) を見る読みながら書きつけたメモ: 自分と他人の言い訳に付き合っていたら、それだ…

【1月9日追記】 はてブより:

font-da 問われる側としては、問うた先に希望がないから暗いし陰湿になるように思う。ほんま希望ないもんなあ……とりあえず研究者は明るく元気でいるのが大事かも(あー嘘くさい たとえば中学校でいじめの実情を大人に言うと、加害者らはそれを「チクった」と…

親密圏を、「物のように研究する」

筒井氏(本書著者)の研究方法がデュルケムとどう関係するのか、私には判断できませんが(名前への言及はなかったと思います)、「社会的諸事実を物のように考察する」*1というデュルケムの方法論は、親密圏の「研究」においてどういう意味をもつのでしょう…

親密圏の「研究」

親密性の社会学―縮小する家族のゆくえ (SEKAISHISO SEMINAR)作者: 筒井淳也出版社/メーカー: 世界思想社発売日: 2008/01メディア: 単行本 クリック: 60回この商品を含むブログ (24件) を見る 親密な関係はこれまで、学術的考察の対象ではなかったらしい(同…

個人の思想は、何よりもその《つながりかた》に表れる。 「当事者発言か、メタ言説か」というのがここ十数年の大きな対立だったようだが*1、 どちらの立場も、自分たちが「個人と集団の関係」をすでに設計図として抱え込んでいることを、話題にしない。(そ…