- 作者: 角岡伸彦,西岡研介,家鋪渡,宝島「殉愛騒動」取材班
- 出版社/メーカー: 宝島社
- 発売日: 2015/02/23
- メディア: 単行本
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この案件では、2ch の当該スレッドを長々とリアルタイムで読み続ける、という初めての経験をした*1。本書は本当にありがたい出版で、まずは関係者に感謝。*2
読みながらずっと考えていたのは、
悪意の人が現れたときに、泣き寝入りをせずに、
しかし自分が犯罪者にもならずにいるには、どうすればよいか。
孤立した人が突発的に対処しようとすれば、犯罪に手を染めるしかなくなる。
必要なのはその逆で、《集合的・持続的な》対処。
これを実現するための環境整備や技法が要る。
本書を読むかぎり、「相手の良心を期待しながら、好意的に対処する」ような努力は、すべて後妻側に利用され、踏みにじられている。*3
やしきたかじん氏のワンマンな――というより、はっきり言えば DV 的な体質も描かれているが、そこに形成された人間関係が、悪意の人を利した可能性はないか。あるいはその悪意は、どんな環境要因を利用したのか。*4
虚言とその加担者が周囲にかけるコストが不当極まりないのは当然として、
そういう人が現れた時に、適切に手を打てる《集合の状態》が、準備できないだろうか。
トラブルを通じて、環境の前提や設計実態が明らかになる
阪神・淡路大震災の時には、消火栓や防火水槽が機能しないことが判明した(参照)。それと同じく、耐え難いトラブルに直面して、はじめて「そうだったのか」に気付くことがある。
《出版社やメディアは、自分たちの企業利益を優先して、人気作家の社会的不正を黙認する》――このいわゆる「作家タブー」は、今までは都市伝説みたいに言われるだけだったが、百田尚樹氏の言動を通じて、実際にあることに疑いがなくなった。
今回の『殉愛』事案は、関西タレントの遺産問題というだけの意味では小さな事件かも知れないが、剥き出しになった《問題の事情》は、しつこく究明する価値がある。ゴシップとして消費するためではなくて、私たち自身の今後のために。