WPA 疫学・公衆衛生セクション ミーティング -「日本の参加者の方へ」*1
この度、わが国でははじめてとなる WPA 疫学・公衆衛生セクションミーティングを2014年10月16〜18日に奈良で開催することになりました。
読みやすいように少し改変して引用:
WHO(世界保健機関)が、2013年の第66回総会(参照PDF)において、「メンタルヘルス・アクションプラン2013-2020」(PDF)を採択したこと、その中心となる考え方は「No health without mental health(精神保健なくして健康なし)」であることを踏まえて、日本における公衆衛生としての精神保健の発展にも焦点を当てます。
関連して、Wikipedia -「障害調整生命年」*2
disability-adjusted life year (DALY、ダリー) とは、病的状態、障害、早死により失われた年数を意味した疾病負荷を総合的に示すもの
障害調整生命年は、早死によって失われた潜在的な年数の概念を拡張して、損なわれた健康や障害のために失われた健康的な生活の年数も含めたものである。それにより、死亡率と疾病率は単一の共通指標に統合されることになる。〔…〕 「1障害調整生命年」は、それゆえ、1年間の健康生活が失われたことと同等である。
次が重要。
1990年のWHOの報告は、10大障害原因のうち5つまでが精神疾患によるものであることを示している。
精神的及び神経的な病的な状態は、障害を有した生活のうちの28%を占めているが、その反面、全死亡のわずか1.4%しか占めておらず、損失生存年数の1.1%しか占めていない。それゆえ、精神疾患は、伝統的に疫学的には重要な問題と捉えられていなかったが、障害年数を考慮に入れると諸国民に対して非常に大きな影響を与えていることが示されている。
意義のある議論だと思うのですが、
文化人類学者の池田光穂氏は、この「DALY」という概念をこき下ろしています。
http://www.cscd.osaka-u.ac.jp/user/rosaldo/090710daly.html
障害の重み付けの恣意性ならびに障害後の余命に与える環境要因――例えば福祉制度がゆきとどいた先進国の障害者と公的で安価な福祉システムが期待できない国家・地域・時代状況とでは、余命の損失年数や重度を均質にとらえることができない――などが考慮できないアバウトな指標であることがわかる。
このような小手先の指標が開発されてきた背景には、もともと死亡を指標にする生者の健康状態の表すという「古典的方法」――私は古典主義的方法と言い換えたい気分である――が、統計的手法の洗練化によってある種の限界、ある種の破綻を招き、かつまた健康転換という状況のなかで、生者の傷病や障害という生命の質を、余命との関連性のなかで論じようというトレンドが、国際保健の比較研究のなかで要請されてきたからである。
池田光穂氏のおっしゃることは、もっと詳細に論じる必要があると思います。
参照:カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)による解説動画(英語)
《障害-調整-生存-年(DALY、ダリー)》という概念は、日本語圏ではあまり見かけませんが、ひきこもり状態に関係していることは明らかですね。
*1:WPAは「World Psychiatric Association(世界精神医学会)」の略ですね。
*2:《life-year》の訳は、「生存年」と「生命年」が見られますが、厚労省は「生存年」を採用しているようです(参照)。 cf. 池田俊也, 田端航也 【研究ノート:わが国における障害調整生存年(DALY)- 簡便法による推計の試み】(PDF、厚労省サイト)