人間という場所に何が生じているか、それをどうするか

古谷利裕氏 http://bit.ly/W7J6KI より


量子コンピュータ授業 #8 量子コンピュータの歴史

古谷氏はこの動画を何度も観たそうだが(参照)、たしかに本当に面白い。
あらためて、

    • 「この現象世界において、人間というのは何なんだろう」
    • 「単なる物理現象と比べて、何がどう違うのだろう」

――と、思わずにいられなかった。*1


たとえば物理学には「仕事」という概念があるけれど(参照)、
これは単にエネルギーの話をしているだけで、

  • まったくの自然現象で大きな岩が移動する話と、
  • 「人間労働」がピラミッドを作る場合とで、

質的差異を論じられない。

動画からメモ

ロルフ・ランダウアー (1927-1999)  "Information is Physical."

 Information is inevitably tied to a physical representation.
 It can be engraved on stone tablets, denoted by a spin up or down, a charge present or absent, a hole punched in a card, or many other alternative physical phenomena. It is not just an abstract entity; it does not exist except through a physical embodiment. It is, therefore, tied to the laws of physics and the parts available to us in our real physical universe. (bit-player)

チャールズ・ベネットによる、マックスウェルの悪魔の最終決着

  1. 観測・演算は、可逆的操作(エネルギーゼロで、元に戻すことができる)
  2. 情報処理のプロセスは非可逆であり、物理法則を破れない。
    • その都度の結果を「忘れる」ことをしない操作は、頭の中のエントロピーを増やす。
    • 《忘れる≒情報を消去する》には、エネルギーが要る。つまりやっぱり、エントロピーを小さくするには、エネルギーが要るということ。*2

「観測・演算」のメタ性を自称する言説のウソが、すでに言われていないか?

《参与観察論文作成》は、不可逆の関係制作をやっている。

制作という「つもり」がなくとも、すでに何かやってしまっている。*3


ジョン・ホイーラーの世界観、「すべては○○」の三段階

  1. 素粒子(Particles)
  2. 場(Fields)
  3. 情報(Information)


古谷利裕氏 http://bit.ly/W7IPaL より

 ここでおもしろいのは 物理(実在?) と 情報(抽象形式?) の関係 で、
 この両者が決して切り分けられない形で絡み合い、密接に関係している

 エントロピーと情報とが同じものとして考えられるという事実〔…〕が、
 物理の情報化へつながるのか、情報の物理化へつながるのか、

《もの主義》と《イデア主義》の葛藤(→カント「Realität」誤訳問題が、
量子論を経由してやり直されている。*4


エントロピーが「乱雑さの大きさ」だとして(参照)、
情報量が増えることは、「秩序がなくなること」と位置づけられる。
しかし意味の創造(作品洗練)では、エネルギーの質は上がっていないか?(参照
素材を工夫し、「見事な作品を作り出す」*5ことは、エントロピーの増大か?

制作過程は、たんなる物理現象ではない

「人間とは何か」というのは、プロセスの質の問題。
それは何をやっていて、どういう技法を生き得るか。
人間というプロセスに必要な厳密さは、論理に尽きるか。



*1:自然現象にも動物にも、《技法》は要らない。

*2:人間活動と、たんに物理的なエネルギー消費は、何がどう違うか。今のところ、質的に同じものとして説明されている。

*3:「知ってはいないが、やっている」が、知的言説において徹底的に抑圧される。「ディシプリン通りであれば、アリバイがあるのだ」と。

*4:たとえばヘーゲル絶対知のプロジェクトは、「物理現象を情報に還元すること」といえるか。

*5:理論だって「作品」だ