GCOE国際シンポジウム 「コンフリクトを軽減する対話と実践――人文治療学の挑戦」 聴講

  • 李光來*1(Lee Kwang Rae、江原大学哲学科教授、韓国日本思想史学会長)
    • 「endgame としての哲学治療学試論――韓国的 panopticon と diaspora を中心に」
  • 金善姫(Kim Sun Hye、江原大学人文学部研究教授)
    • "Socratic Dialogue and Praxis Reducing Conflicts : Challenge of Humanities Therapy"(「コンフリクトを軽減するソクラティク・ダイアローグと実践――人文治療学の挑戦」)
  • 李基原(Lee Kiwon、江原大学哲学科講師)
    • 儒学的人間学と自己形成――韓・日近世人間の誕生についての一試論」

韓国の江原大学、「人文治療学(あるいは哲学治療学)

日本同様、韓国でも自殺率(人口10万人当たりの自殺者数)が急増していて、1997年に13人であったのが、2007年には27.3人と倍以上に急増とのこと(参照)。
今回の発表では、思想や政治の実情に言及があり*2「薬だけでは治らない」という基本認識を共有できました。

    • ※配布された資料には、日本の引きこもりにも言及があるのですが、KHJ親の会が出所の情報として、「ひきこもり163万6000人、そのうち、30歳以上の大人は130万人を上回っている」とあり、首をかしげざるを得ませんでした。 先日は「ひきこもる人は360万人」の情報が、原口一博総務相から出ています(参照。 正確な統計はそもそも取れないと思いますが、「なぜこの数字が出ているのか」という説明書きが常に必要に思います。



質問時間に手を挙げ、次の2点を会場発言しました:

  • フェリックス・ガタリが死ぬまで勤務していた精神病院が、もう50年以上も、哲学的趣旨をもった臨床実践をしています。
  • 2004年の日韓ひきこもり会議の際、日本側は哲学者・社会学者を含むいろんな肩書きのパネラーが参加しましたが、韓国側は「精神科医」が中心でした(参照)。 「외톨이(ウェトリ、ひとりぼっち)」についても、今回の先生方のような議論が必要だと思います。

もちろん、精神科医の先生方の協力も必要です。
細かい立場の違いはあっても、いきなり党派主義に陥るのでなく、《政治的・思想的な問題意識が必要だ》という大前提が、共有できないでしょうか。
最近は、発達障碍や社会保障をめぐる――まさに「政治的な」――思惑もあり、むしろ人文系の議論が排除されている印象すらあります。



*1:今春に、『韓国の西洋思想受容史』(御茶の水書房)という邦訳本が公刊予定とのこと。

*2:携帯電話に支配される「パノプティコン不安症候群」といった議論のほか、北朝鮮にまで言及があったのは驚きました。