今回はここまでですが、最後に

“臨床的な” 趣旨でハイデガーを参照することが、あながち恣意でもないと思える箇所を引用してみます。

 わたしの最初の手紙に対して彼〔ハイデガー〕が速やかな返事をよこしてくれた本当の動機がわかったのは、ずっと後になってからのことだった。あるとき、自分から打ち明けてくれたのだが、ハイデッガーはもともと、自分の思惟を十分に理解してさらに展開してくれそうな医者との関係を熱望していたのである。彼は、自分の哲学的洞察が哲学者たちの書斎でほこりをかぶっているだけでなく、もっと数多くの、とりわけ助けを求めている人々のためにもなりうる可能性を知っていた。 (『ツォリコーン・ゼミナール』p.iv、精神科医メダルト・ボスによる前書き)