親密圏を、「物のように研究する」

筒井氏(本書著者)の研究方法がデュルケムとどう関係するのか、私には判断できませんが(名前への言及はなかったと思います)、「社会的諸事実を物のように考察する」*1というデュルケムの方法論は、親密圏の「研究」においてどういう意味をもつのでしょうか。 「物のように」というと近代的対象化でしかないですが、《素材化する》というと、論じている自分じしんを関係内在的に考えることになります。

再帰性」とは別に、社会学が、関係性の改変事業になることは・・・?

 再帰性 reflexivity とは,社会学的には「○○についての言及が,○○自身に影響を与えること」と定義できます. (本書の著者・筒井淳也氏による解説

調査事業をふくむ学問そのものを、一時的にではなく恒常的に、社会のなかに位置づけること。調査している期間や関係だけを特別視するのではなく、社会学をふくみこんだ集団のあり方を、「社会学発生以後の関係性」を、共同で作り上げてゆく、その意味で歴史をつくってゆく。
ある集団や個人を「研究対象」にし、業績生産のために利用する――「どうせ社会学はそういうものだから、調査を受ける側も、学者を政治利用すればよい」*2――そういうものでしかないなら、社会学は、人間がお互いをモノ扱いする関係性を反復するにすぎません社会学じしんが、関係性のロジックを介入的に変化させてゆく方向性は、あり得ないのでしょうか。



*1:デュルケム『社会学的方法の規準 (岩波文庫 白 214-3)』p.71

*2:社会運動の文脈では、そういう集団的思惑を感じるし、それは学者のかたも理解して参加されていると感じる。 本書の言葉では「トレードオフ」。