調査は、都内に住む15〜34歳の男女3000人を住民基本台帳から無作為抽出し、昨年9〜10月に個別に訪問。 1388人から協力を得た。 うち10人を引きこもりと判断し、別途調査した18人を加えて計28人を分析対象とした。
原因のトップは「職場不適応」と「病気」の25%だった。 「就職活動不調」(14%)を加えると、就労・就職をきっかけとする人は39%に上った。 「不登校」は18%だった。
年齢層別では、「30〜34歳」が全体の43%で最も多く、「15〜19歳」「20〜24歳」「25〜29歳」はいずれも18%。 引きこもり状態になった時期は「25〜27歳」(29%)が最も多かった。 (佐藤賢二郎)
高齢化もさることながら、これまでに見てきた「最初のきっかけの7割前後は不登校」というデータと大きく違う。
以下、文献として最もよく読まれている『社会的ひきこもり―終わらない思春期 (PHP新書)』に掲載されている、斎藤環氏が1989年に行なった調査の結果より(強調は引用者)。
調査の対象は1983年1月から1988年12月までの6年間に、私の所属する研究室の関連機関を受診した患者さんのうち、次の条件をみたす群です。
これらの条件を満たしたものは80例(男性66例、女性14例)でした。
初診時の年齢は最年少の12歳から最年長34歳までで、平均19.6歳でした。 また調査時点での年齢は13歳から37歳までで平均21.8歳でした。 (p.32-3)
- 調査時の平均ひきこもり期間は39ヵ月(3年3ヵ月)
- 圧倒的に男性に多い
- 最初に問題が起こる年齢は、平均15.5歳
- 最初のきっかけとしては、「不登校」が68.8%ともっとも多い
- 問題が起こってから治療機関に相談に訪れるまでの期間が長い (p.33)
最初の「症状」として、いわゆる「不登校」が7割近くの事例で認められたこと、また経過中に起こったものをすべて含めるなら、9割近い事例に不登校を伴っていたことは重要です。 (p.59)
時代の変化だけでなく、調査する側の性質や、対象・方法、「どこまでをひきこもりに含めるか」によっても、結果が変わってくるはずです。
「都内の引きこもりが2万5000人と推計 東京都の調査で」(産経ニュース)
都によると、無作為に抽出した都内在住の15歳以上34歳以下の男女計3000人を戸別訪問してアンケート調査を実施した結果、引きこもりの若者は全体の0.72%を占めることが判明。 この数字を、実際に都内に住む15歳以上34歳人口の349万1000人(平成18年10月現在)にあてはめると、引きこもりの若者は約2万5000人と推計されるという。
また、引きこもりの若者のうち男性が全体の71%を占め、女性の29%を大きく上回った。
今回の調査の別記事。
以下のように、ひきこもりの親の会に参加しているケースを対象に行なった調査と、今回のように無作為抽出された調査対象でのデータの違いも気になります。
【参照1】:「「ひきこもり」の実態に関する調査報告書 −NPO 法人全国引きこもりKHJ 親の会における実態」(PDF、2005年3月)
平成16年8月から平成17年2月に、全国引きこもりKHJ 親の会の37支部が開催した親の会に参加した人の中で調査協力の得られた362名。 具体的な続柄は、母親235名、父親89名、その他16名、不明22名でした。
ひきこもり状態にある人の年齢でもっとも多いのは26〜30 歳であり、平均は28.1歳であることがわかりました。 1 年前の全国調査時の平均年齢が27.6歳であったことから、平均年齢がちょうど0.5歳上昇していることになります。 本調査ではひきこもり状態にある人の40.3%が30歳以上でした。
平均ひきこもり期間は7.5年であり、10年以上ひきこもっている人の割合は31.5%だった。 20 年以上ひきこもっている人も10人ほどおり、決して少なくはない。 最も長い人は23年間ひきこもり状態にある。
もっともひきこもりが始まりやすいのは、13歳から22歳の間である。 全体の70%超がこの間にひきこもりはじめている。
【参照2】:「ひきこもりの実態に関する調査報告書 〜引きこもり家族調査委員会」(PDF、2006年1月)
平成17年9月〜12月に,全国引きこもりKHJ 親の会の43支部において調査を行いました。 603名から調査協力が得られ, この603名の回答を解析に用いました。
6%の世帯には,本人が2人以上いることがわかりました。これは今まで考えられてきたよりも高い値であるといえます。 疫学調査(金ら,2003;川上ら,2003)から得られた約40万世帯という数字は、5%程度割り増しして考える必要があるかもしれません。
ひきこもり状態にある人は男性が多く, 男:女 は 8:1 程度の割合にあることが明らかにされました。
本人の平均年齢は29.5歳でした。 30歳以上の人の割合は49.8%、40歳以上の人の割合は20.0%であることがわかりました。 なお本人の最少年齢は15歳、最高齢は64歳でした。 本人の平均年齢については、 (略) 2004 年の全国調査で26.6歳(境ら,2005)、2005年の全国調査で28.1歳(中村ら,2005)でした。
平均ひきこもり期間は8.6年、10年以上ひきこもっている人の割合は38.5%でした。 最長で33年ひきこもっている人も存在します。 20年以上ひきこもっている人も20人以上おり、一度ひきこもり状態になると長期化しやすいことがうかがえます。
中学入学から大学卒業に相当する13歳〜22歳の間にひきこもる人が全体の62%を占めました。 また上のグラフからは、26歳くらいまでひきこもりやすい時期が続くことが見てとれます。
親の会や相談機関に来ているケースのほうが、より早期から始まっており、より深刻に見えます。