川北稔(かわきた・みのる)氏

愛知教育大学教育実践総合センター講師(社会学)、1974年生まれ。

 事件の背景には、支援の行き届かない引きこもり問題が存在する。「ひきこもり家族調査委員会」は、当事者の平均年齢が29・5歳、十年以上引きこもっている人が38・5パーセントという深刻な実態を明らかにした(中日新聞五月二十二日*1朝刊)。
 公的な支援は、縦割り行政や「引きこもり」が指す状態の幅広さのために未だに行き届かない。 「引きこもりと言っても幅が広すぎる」(厚生労働省精神保健福祉課、毎日新聞四月二十七日夕刊)。 厚生労働省には引きこもりの問題を専門に扱う部局がなく」精神疾患を患っている場合は『社会・援護局』、働く意欲のないニートの場合は『職業能力開発局』がそれぞれ担当」(日本経済新聞五月十五日朝刊)している。 支援の現場も、「保健所は十分に対応できる体制になく、児童相談所も虐待への対応で手いっぱい」(NPO法人青少年自立援助センター理事長・河野久忠氏、中日新聞五月九日朝刊)という。
 こうした背景から、引きこもりの支援は民間の施設が先行することになる。 宿泊型施設は全国に100ヵ所とも報じられるが、大半が民間による運営である。

2003年2月刊行の『全国ひきこもり・不登校援助団体レポート 宿泊型施設編』では、「全国79ヵ所の宿泊型施設のうち40ヵ所を調査」とある(p.8)。





*1:以下、新聞記事は2006年のもの。