• 『網状言論F改』(東浩紀・編著、青土社
  • 『トラウマティック・ストレス』(ヴァン・デア・コルクほか、誠信書房

 安易な「癒し」に結びついたトラウマ物語がつまらない、という東氏らの指摘はうなずけるが、もちろんだからといってトラウマという問題系自体が消失するわけではない。ひとまず沈黙をもって受け止めつつ、しかし沈黙に沈んでしまわないようにすること。
 オタクの人たちに比べても、ひきこもりの人たちの言葉はとても貧困で、弱い。ネット上を見ていても単発的なグチをいくつか散見するぐらい。
 「とにかく家を出ろ」という説教に反発を覚える人は多いし、実際ひきこもり状態にある多くの人は「命がけで引きこもっている」、あるいはいざとなったら死ぬつもりでいる。それはいいのだけど、言葉が弱いままに留まっているというのは、やはりまずいと思う。――そしてその事情が、トラウマ・サバイバーの置かれた状況と重なる。